松田凌オタクによる「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」観劇所感

全公演終了おめでとうございます!

出演者をはじめ関係者の皆さま方お疲れ様でした。

 

作品への想いと推しへの感謝の気持ちを綴りました。

目次を設けたので、好きな所から読みはじめてください。

読まなくてもいいやと判断した所は読み飛ばしてもなんら問題ありません。

 

目次

筆者について

まず、この文章を書いているお前は一体誰なんだ?

そう感じてる方も多いと思います。

なので簡単に自己紹介をします。

 

私は俳優の松田凌さんのオタクです。

2012年にとあるバラエティ番組で松田さんを知り、

「この人を応援していく」と心に決めた時から11年が経ちました。

私にとって松田さんは所謂「推し」という存在です。

普段は推しの出演する舞台を観に行ったり、

SNSで発信される推しの情報を見ては顔を綻ばせています。

「推しが元気で生きていることが一番」

という真理に気付いてからは、時々しんどいこともあるけれど、

わりと毎日前向きに生きています。

 

今回取り上げる作品「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」

については、今回で3度目の観劇となります。

過去の観劇については後述します。

 

以上が筆者である私の自己紹介でした。

 

「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」とは

作品の基本情報

・カナダ・モントリオールを舞台にした戯曲

・作者はフランス系カナダ人のルネ=ダニエル・デュボワ

・作品の時代設定は1967年。この年モントリオール万国博覧会が開催

・初演は1986年。以降カナダ国内で長年にわたって上演されている

・日本での初演は2014年。今回の上演で6回目となる

松田凌さんは2015年から4度「彼」を演じている

 

作品のあらすじや公演情報については、

以下にリンクを貼ってますのでそちらをご覧ください。

(息を吞むような推しの美しさにもご注目ください)

zuu24.com

 

過去の観劇ばなし

初観劇は2016年。

この時は朗読と音楽が合わさった読み聞かせ形式で上演されました。

正直なところ、初めの感想は「難解」の一言。

一筋縄ではいかない作品の気配を感じました。

まず、物語は殺人事件の自首をしてきた少年=「彼」に対し刑事が取調べを行なっている場面から始まります。

しかし、「彼」と刑事のやり取りを聞いていてもなんだかスッキリしない。

まるで出口の見えない迷路を彷徨っている感覚に陥り、膨大な量の台詞にも困惑しました。

観た人誰もが泣いた、素晴らしかったと感じるような分かりやすい作品に慣れきっていた脳みそに大打撃を食らいました。

自分の頭で考えろ。

そう言って脳天を殴られたような感覚でした。

終演後は放心状態が続き、電車を乗り間違えたりしました。

とまあ初見では作品に圧倒されるばかりで、魅力を理解するまでに至らなかったことが歯がゆかったです。

 

 

時は移って2019年。2度目の観劇チャンスが巡ってきました。

こちらは上演が4月で、ちょうど年号が「平成」から「令和」へ移り変わる時期だったことをよく覚えています。

その時のSNSでの呟きがこちら

当時の私の喜びようが伺えます。

 

「彼」の口から紡がれる言葉を全てそのまま理解しようとすると思考回路はショートしてしまう。

前回の観劇でそう学んだ私は、今回は台詞よりもその場の空気感や「彼」の表情や動きに注目して、心で感じたことをそのまま受け止めてみることにしました。

すると、「彼」の感情がこちら側に染み込んでくるような、「彼」のことが1ミリも分からないのに、分かるという摩訶不思議な感覚に陥る瞬間が訪れました。

相変わらず台詞はまだ分からないところもあったけれど、

何度も観るうちに「ここはこういう意味かも?」と自分なりの解釈が生まれる心の余裕も出てきました。

次第に「彼」と自分との距離感も変わり、自分がまるであの執務室に居合わせた目撃者になった気持ちで席に座っていることに気付きました。これほどまでに没入感を味わったのは後にも先にもこの時が初めてです。

その為、終演後会場に明かりがついて、目の前に「彼」がいない事実と共に、急に外へ放り出されたような気持ちがして、寂しいとか悲しいとは少し違う、言葉にできない感情に襲われて涙が止まらなくなりました。

毎回泣きながら日本大通り駅まで歩いて帰っていたのは今となっては良い思い出です。

 

そしてしばらくすると襲ってくる「凄いものを観た」という高揚感を、一度味わうと抜け出せなくなりました。

当初は1公演のみの観劇の予定が、いつの間にか手元のチケットは増えていき、

結果的に1週間のうちに4公演観劇するくらいこの作品と「彼」の虜になったのです。

 

役にのめり込む、というよりは「彼」に己の肉体を貸し与えているような松田さんの様子は、「終演後このままどこかに消えてしまうんじゃないか」と心配になるくらいギリギリの状態に見えました。

勿論、松田さんはご自身の仕事や周囲の人に対し強い責任感をお持ちなので、そのような心配は無用なのですが、一瞬でもそう感じてしまうくらい「彼」に全身全霊で向き合っていらっしゃったのだと思います。

千秋楽を終えてすぐに撮影されたファンクラブ会員向けの動画に映る松田さんは、まだ「彼」の面影が強く残り、その表情や纏う空気が怖くてスマホを持つ手が震えた記憶があります。

 

このように、舞台『クロードと一緒に』は私に新たな観劇体験を与えてくれた非常に思い入れの強い作品となりました。

 

2023年版の観劇所感

三度目の観劇で、時の流れを実感することがありました。

そう、演じる側も歳を重ねれば、当然観劇する側も歳を重ねるわけです。

それを最も感じたのが「刑事」役への印象の変化でした。

刑事さん、苦手だったんですよ。

高圧的だし、声を荒げるし、「彼」を軽蔑する態度が好きになれませんでした。

けれど神尾佑さん演じる刑事は、確かに苦手な人なんだけど

「この人にもなんか色々あるんだろうな…」と感じられる人物でした。

執務室から外線で家族(おそらく妻?)に連絡する場面では、刑事という役割をまとっていない人間の生々しさが垣間見えて新鮮でした。

最後に「彼」の独白の場面での表情や佇まいも印象に残っています。

個人的にツボだったのは、ジャケットを脱ぐとベストにショルダーホルスターを装着されてたことですね。

めちゃくちゃカッコよかった…

 

あとは、「彼」に対する印象も前とは少し変わりました。

それは、私が思っているよりも「彼」は物凄くクレバーで、客観的に物事を見てきた人物なんじゃないかってこと。

きっと、「彼」は今までの人生や男娼として生きる中で喜び、悲しみ、怒り、絶望などあらゆる感情にまみれて生きてきたんじゃないかと感じました。

だから、クロードと出会って関係が深まるにつれて、2人の行く末に待ってる結末も「彼」は痛いほどに分かっていたのかもしれません。

その上で、今回の事件で「彼」がクロードを何から守ろうとしていたのか。

今回の観劇でその“何か”の一端を掴めたような気がしたのです。

それを言葉にしてしまうと非常に陳腐なものになってしまいそうなので伏せますが、

この気持ちを味わうことが出来て、横浜に来て本当に良かったと心から思いました。

毎公演「彼」や刑事、速記官、警護官から自分が感じとるものが微妙に異なるのも、

この作品のもつ不思議な魅力の一つだなとしみじみ感じました。

 

そして、再び横浜赤レンガ倉庫のあの会場で一瞬でも現実を忘れ、

ひと時の濃厚な観劇体験が出来たこと。

これが何よりの幸せでした。

まとめ

一番伝えたいことは「感謝」。

こうして再び横浜(今回は京都も!)で上演してくださった運営の皆様、

そして再び「彼」として板の上に立つこと決めた松田さん、

並びに関係者の皆様方、

本当にありがとうございました。

この夏、演じる側も観る側も命がけで駆けぬけた舞台は幕を下ろしました。

ですが、舞台上に現れた「彼」の姿はきっといつまでも色褪せないでしょう。

またいつか「彼」に出会えることを願いながら、私の観劇人生は続きます。